万葉集に星を詠った歌が少ないのは何故

令和への改元発表から万葉集ブームです。一方、ブラックホール撮影成功やら、はやぶさ2のミッション成功やらで星空を見上げることも増えました。

 

山口大学の吉村教授が万葉集検索のデータベースをつくられています。例えば「梅」で検索すると万葉集全4516首のうち339首がヒットします。「桜」は47首なので「梅」が優勢です。そこで、「星」で検索してみると33首が選択されました。

 

七夕
七夕

「星」33首のうち天の川の「彦星(男星・孫星)」が22首を占めます。尚、「天の川」で検索すると61首がヒットします。

ところが、他に星の名前が歌われているのは「夕星(ゆうずつ)」の2首だけです。夕星は、宵の明星つまり金星のことです。残りは単に「星」で9首です。

 

確かに、天の川以外の天文に関する歌が少ないような気がします。太陽や月、空や風といった自然を詠んだ歌の数と比べて圧倒的に少ないです。「夜」を含む歌は1159首もありますし、自然現象では「霧」が183首、「雷」でさえ15首あります。

 

照明が整っていない当時は、現代よりも星空を見上げる時間は比較にならないくらい長かったでしょうし、見つけられる星の数も多かったはずです。星の動きで時間や場所を見極めるといった知識も日常のものだったはずです。

 

そうなるとやはり、星を詠うことに何かの躊躇いがあったのだろうと思います。

人は死んで星になるとか、それ故に星を指さしてがいけないとか、そういう考え方があったのかも知れません。彗星や流れ星に不吉な予感を持つことも知られていますし、星は願いを掛けるものではなかったのでしょう。