他人ができないことをしたイチローの引退

他人に勝つ方法は二つです。一つは先にすること。もう一つはできないことをすること。

 

会社の経営では、先にすることで他社に勝つことのほうが圧倒的に多いです。予め研究開発や商品開発を実行しておき、必要な資金や人材も準備しておいて、チャンスが来たら他社の一歩か二歩前を、追いつけないスピードで走りぬくのです。イチローは「成功(本人は嫌いだそうですが)」を、他者ができないことをしてつかみました。とても稀なことです。

 

イチローの引退
イチローの引退(MSNのWebサイトから)

イチローの記録について書くのも野暮ですが、日米通算で4367本のヒット、235本のホームラン、1309個の打点、708個の盗塁。守備では189個の捕殺を記録しています。

 

平成4年(1992年)に神戸のオリックス・ブルウェーブでプレーをはじめたイチローは、平成13年(2001年)にシアトル・マリナーズでメジャーデビューします。そして、平成最後の2019年3月に引退したわけで、まさに平成を代表したスーパースターです。

 

野球は基本的に点取りゲームですから、たくさん点を取る選手がいい選手です。そう考えれば、一振りで点が入るホームランや長打を狙ってかっ飛ばすことが有利です。イチローの活躍した1990年代後半のプロ野球では日本人選手では松井秀喜や清原和博がいましたが、クリーンアップの半分以上は外国人選手でした。

2000年代のメジャーリーグもボンズやマクガイヤー、ソーサなど大型のマッチョマンが闊歩して本塁打を競っていました。

 

そんななかに、イチローが登場したのです。打ち取ったはずの打球が、何故かヒットになり、いつの間にか塁に出ているイチロー。少しの隙も見逃さず、二塁・三塁へと進み、よくわからないままに得点を稼いでいるマリナーズ(2001年は116勝46敗だった)。

メジャーリーグで野球の面白さの概念をがらっと変えてしまいました。

 

イチローは誰のマネもしなかった。イチローは誰も目標にしなかった。イチローは誰かに先んじようともしなかった。イチローはイチローだからこそいいわけです。

なかなか難しいことです。お疲れ様でした。