毛利のお殿様は明治になってもお金持ち

カルロス・ゴーンさんはまだ拘置所にいますが、高額報酬の話題も遠くなってきました。

 

日本で個人所得税の徴収がはじまったのは明治20年(1887年)のことです。世界最古のイギリスで所得税がはじまってから90年後のことで、アメリカから遅れること25年です。但し、オランダやスペインよりは早いので、税の後進国ってわけでもありません。

 

マネー
マネー

日本初の所得税では、年間所得が300円以上の人が対象です。

当時の日本の人口は約3800万人ですが、所得税の対象になった人は僅かに12万人しかいませんでした。そば1杯が1銭(0.01円)でした(つまり1円でそば100杯)から、年収300円は今で言えば1000万円のイメージでしょうか?

 

年間所得300円以上で、課税等級5級となり1%の税率で課税されます。累進課税になっていて、課税等級4級(所得1000円以上)は1.5%、以下3級(1万円以上)2.0%、2級(2万円以上)2.5%、となり1級(3万円以上)では税率が3.0%となります。

この課税等級1級となったのは、全国にたったの60人です。

 

当時の300円を1千万円とすれば、3万円は10億円です。まぁ、こんなものかも知れません。

高額納税者の1位は70万円(今の価値で200億円かな?)の所得で岩崎久弥(岩崎弥太郎の長男)、2位は岩崎弥之助(弥太郎の弟)です。三菱財閥恐るべしで、日本全体に占める三菱の大きさがよくわかります。ゴーンさんも真っ青です。

 

このランキングの3位に、長州藩最後の殿さまでした毛利元徳公が約17万円(50億円くらいに相当?)で入っています。お~!、山口のお殿様は裕福だったのですね。

 

実は、当時の毛利元徳は十五銀行の頭取を務めていました。十五銀行は遠く遡れば、現在の三井住友銀行につながりますが、とても特別な銀行です。

明治になると、それまでお殿様たちが持っていた権利は政府が取り上げたのですが、代わりに公債を発行して利子を受け取れるようにしました。お殿様たちが困って、反抗しないように、この公債の運用をする銀行として明治10年に十五銀行をつくったのです。

 

出資者は、徳川・松平・山内・黒田・池田・南部・・要するに、お殿様の銀行です。当時150ほどあった国立銀行の総資本の半分は十五銀行に集中していたということです。

明治20年には、毛利のお殿様が、お殿様の銀行の頭取だったということなんですね。

 

ちなみに、戦後の昭和29年から平成16年までは毎年高額所得者が発表されていました。最初の10年間のうち、8回は松下幸之助さんが1位(残り2回は2位)です。

当時の松下幸之助さんの年間所得が5億円くらいで、昭和35年のそば1杯が30円だったので、今の価値なら70~80億円というところでしょうか?

 

以上、今日は景気のいいお話でした。