原爆投下は違法ではないのか?

韓国で戦時中の日本への徴用工(出稼ぎ労働者)に関する判決がありました。

 

また、韓国人の人気音楽グループが、Tシャツに原爆の写真をあしらって愛国?を訴えたということで問題になっています。それでは、原爆投下の違法性や損害賠償について、日本の裁判所はどんな判断を下したのかをみてみます。

 

判決
判決

原爆投下の法的評価をした唯一の判決は、1963年12月7日の東京地裁での判決です。

「原爆判決」あるいは原爆被害者として原告になった方の姓から「下田事件」と呼ばれます。

 

判決は前段と後段に分けられます。

 

前段で、原爆投下行為は国際法に違反していると認定しています。

1.原爆が新兵器であるから国際法適用範囲の外であるということを否定。2.国際法違反の無防守都市への無差別攻撃であると認定。3.軍事目標区域外への爆撃が必然である状況を否定。4.国際法違反の不必要な苦痛を与える攻撃手段であったと認定。という4項目から、原爆投下は非人道的で国際法違反と認定しました。

 

一方、後段で、国際法上の個人の請求権は条約によって限定されること。日米平和条約が個人の国際法上の請求権を認めておらず、国内法上の請求権も放棄していることから、原告に損害賠償請求権が無いとして、請求を棄却しました。

 

原告は、前段の国際法への違反という判決に満足して控訴をせず、被告もまた損害賠償請求が棄却されたことで控訴しませんでしたので、この判決は確定しています。

 

東西の核軍拡競争の最中に出された判決であり、国際社会に意義を高く評価されました。欧米を含む世界中で、この判決はとても有名です。

現代国際人道法の原点となった判決として、55年を経た現在でも、法的・社会的に再評価されているそうです。