働き方改革の底にあるものを確認する

今日、「働き方改革関連法案」が衆院の厚労委員会で可決されました。

 

衆院厚労委20180525
衆院厚労委20180525

最近ではお馴染みの光景ですが、一部の野党議員が採決を妨害して委員長を取り囲んでいます。まぁ、本気で採決させないとか、心から法案に反対しているとか、というわけでもなさそうなので、パフォーマンスですね。

ただ、子供には見せられないです。学級会の多数決で、黒板の”正”の字を消しに行く駄々っ子みたいです。

 

さて、法案そのものについてはこれまでも書きました。中小企業の経営者さん(働く人ももちろんです)にとって、影響の大きい法案ですが、あまり興味を持たず、よく知らないという方も多いです。

そのうえ、野党側の主張やマスコミの報道で、この法案は経営側に有利なものと誤解している方すらおられます。

 

現実は、全く逆で、経営者側に厳しい法律です。個人的には、厳しすぎるとさえ思っています。中小企業の経営者は、我と我が身を守ること、ひいては会社を守るための準備をしなければなりません。法案修正のなかで、中小企業には猶予期間が1年延長されましたが、決して十分な時間ではありません。早めに準備をはじめましょう。

 

この法案が成立した背景というか、底にあるものを確認しておきます。

 

一番の底は、労働人口が減少しているということです。日本の労働人口のピークは、20年前の1998年(6,793万人)です。2017年は6,556万人となっています。ここまでは緩やかな減少と見えますが、少子化によって今後は減少幅が拡大していきます。

 

労働人口の減少は、人手不足をもたらします。私たちの受ける経営相談でも、どこかに人材はいないか?というのが圧倒的多数になってきました。今や、有効求人倍率は1.6となっていて、全国どこでも、またどんな業種でも人材は不足しています。

 

この結果として、賃金(経営者にとっては人件費労務費)が上昇しています。山口県でも最低賃金は777円です。10年前が657円でしたから、18%の上昇です。また、同一労働同一賃金の導入や正社員化によって、実質賃金や家計可処分所得が大きく伸びています。

 

一方で、労働時間は長時間労働の是正や過労死の社会問題化によって短くなっています。また、健康経営という流れはもう止めようがありません。もちろん、これらはいいことなのですが、悪用する人もいるので不公平感が否めません。

 

働く人が減って、働く時間も延ばせず、賃金を増やすとなれば、労働生産性を向上させるしかありません。主なテーマは第四次産業革命と言われるICT技術をはじめとするテクノロジーの導入です。絵に描いたように言えば、生産性を向上させて経済規模が維持拡大できれば、人口減少は1人当たりの取り分(分け前)が増えるわけですから、いいですよね。

 

ただし、人々の労働によって得られた付加価値からしか、分け合えないということはりかいしておかなければなりません。