【日曜連載】中小企業診断士試験合格への道標⑳

連載第20回目です。今回は、1次試験の「企業経営理論」の3回目です。

 

ビジネス資格に兆戦
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企業経営理論は3つのカテゴリーからできています。「経営戦略論」「組織論」「マーケティング」で、この3分野から等分に出題されます。

 

1回目は「経営戦略論」、2回目は「組織論」を取り上げたので。今回は「マーケティング」です。

 

昨年は1~13問が「経営戦略論」、14~27問が「組織論」、28~36問が「マーケティング」でした。

マーケティングの問題は9問ですが枝問があるので設問は14問。配点は33点です。

この3分野の配点は律義に1/3づつになっています。

 

昨年の問題では、マーケティング以外の2分野は1問1答ですが、マーケティングは枝問があって、問題文が長くて設問も少々複雑です。冷静に問題の意味を読み取ることが大事です。

 

さて、昨年の試験問題から解説してみます。

枝問があるのが特徴だと言いながら、長い問題を貼り付けるのも面倒なので1問1答の第33問を取り上げましょう。

 

その前に、私の教科書にある「アッサエルの購買行動の4タイプ」を載せておきます。(設問でも、その他の文献もアサエルですが、教科書ではアッサエルとなっています。)

 

 

では、問題を見てみましょう。恐らくですが、この問題は昨年の試験のなかでは最も難しい問題の一つだったと思います。

 



消費者の購買意思決定についての問題です。すんなり出来たって人がいるでしょうか?

日頃からマーケティングを専門にしている人であっても、ポカ~ンとするような問題ではないかと思います。

 

さて、最も適切なものはどれか?と問う問題では、複数のことを書いていて、そのうち1つが不適切で残りが適切という作問の仕方があります。全部不適切だったらすぐバレてしまうので、不適切を適切に紛らわすのです。

 

最初に、アの選択肢がその紛らわしい作問です。

A「ドレッシングは商品間の差を理解しやすい」、B「ドレッシングは低価格で特にこだわりもなく購入できる」、C「低価格でこだわりなく購入できる商品を消費者は多く検討しない」、D「そういう商品は慣習的な購買行動をとりやすい」という4つのことが書いてあります。

 

CとDは適切ですね。問題になるのは、AとBです。普通の消費者にとってドレッシングの商品間の差が理解しやすいということは無いので、Aが不適切です。

 

つまり、ドレッシングはアエサルのいう④習慣的購買行動に該当する商品ということです。

また、あなたがドレッシングに強いこだわりを持った消費者とすればBが不適切ですね。

いずれにしても、AとBが矛盾しているので、アの選択肢は適切ではありません。

 

次に一つ飛ばして、ウの選択肢です。この選択肢が最も判断が難しいですね。

この設問で出ている特別な人に贈る宝石は、一生に一度の買い物ですから、複雑な情報処理をして購入したいと思うのは当然です。いかにも適切なようなのですが、一生一度では、どんなに頑張っても決め手になる情報の分析はできません。

結果的には、ブランドとか店舗の格とか、営業マンの身だしなみとか、簡単な情報から意思決定することになりそうです。しかし、ウの選択肢を棄てるのは容易ではないでしょうね。

  

さて、残り3つの選択肢ですが、「連結型」「辞書編纂型」「EBA型」という三つの言葉が出てきます。受験するときもそうですが、診断士を4年近くやっていても一度も聞いたことのない言葉です。

そもそも「決定方略」という言葉も初見です。辞書によると、「複数の選択肢から、何かを選択する場合の心理的操作方法」とあります。

その決定方略には、次のようなものがあるそうです。 

 

「態度参照型」 過去の購買経験,使用経験から好意的な態度を持つブランドを選ぶ。

「加算型」 製品属性の全ての効用を数値として評価して、その合計点の高いブランドを選ぶ。

「連結型」 製品属性に対して必要条件を設定して,ひとつでも満たさなければそのブランドは購入しない。

「分離型」 製品属性:製品属性に対して十分条件を設定して,ひとつでも満たせばそのブランドを購入する。

「辞書編纂型」 最も重要だと見なされる製品属性について比較して優位なブランドを選ぶ。もし同点なら、次に重要な製品属性で比較する。

「逐次削除型(EBA型)」 最も重要な製品属性について必要条件を満足しているブランドを残す。残ったブランドのなかで次に重要な製品属性の必要条件を満足してものを残す。

これら以外にも数多くの方略があるようで、全てを網羅するのは難しいでしょう。 

 

つまり、イは「連結型」ではなく「態度参照型」なので不適切です。

エは、設問の通り「辞書編纂型」なので適切です。・・エが正解です。

オは、「EBA型」ではなく、「加算型」なので不適切です。 

 

正直なところ、この29年第3問は運のいい人は出来るが不運な人は落としそうな問題です。

アの選択肢は外せたとして、用語の定義を知らなければイ~オはどれを選んでも不思議はないような気がします。25%の正解率でしょうか?

 

正解のエのパソコンの買い方のほうが、実際と違うような気すらします。パソコンは既に生活必需品になってますから、それぞれの属性で度々比較するということはしないです。

なかなか難しいところです。