受刑者の脱走を大きな問題にしたくない

今治も尾道・向島も呉線・安芸長浜駅も広島駅も、私にとっては割と馴染みのあるエリアです。

 

呉線:安芸長浜駅
呉線:安芸長浜駅

松山刑務所の大井造船作業場(今治市)から脱走した受刑者が23日振りに広島駅近くでつかまりました。

この大井造船作業場は日本で唯一の塀の無い刑務所だそうです。

 

受刑者は、今治から車を盗んで向島に行って空き家などに17日間潜伏してから、海を泳いで本土に渡り尾道市内で4日間隠れていた。

夜のうちに盗んだバイクで移動して、呉線の安芸長浜駅から始発電車に乗って広島駅に行き、シャワーを浴びるために入ったネットカフェで気付かれたという事情です。

 

この逃走の間に動員された警察官や刑務官は延べ1万5千人に上ったそうです。皆さん、本当にご苦労様でした。

警察や警察官に対する批判も多いようですが、刑務所ですから法務省の刑務官の責任範囲ですね。まぁ、島から逃げられてしまったのは警察官の失態といえば失態かも知れません。

 

以前にも書いたのですが、日本では受刑者というのは非常に少なくて5万人足らずです。刑務所も定員割れのところが多いです。目出たいことです。

一方で、受刑者の45%が累犯。つまり複数回の犯罪を犯して、社会と刑務所の間を行き来している人です。

 

山口県には美祢市に美祢社会復帰促進センターという名称の民間資金を投入した刑務所があります。高い塀で覆われていなくて、金網フェンスで仕切られている刑務所です。定員は1300人です、800人弱が収容されています。

刑務所の食堂を一般の人が利用できるようになっていたり、所内に保育所があったりします。初犯で重罪ではない人に限って収容しているわけですが、少し開放的です。

 

今回の逃走劇があった大井作業場ですが、過去にも何件も逃げた人がいるそうです。比較的近所で、短時間のうちに見つかったので大きな問題にはなっていなかったわけです。

 

さて、今回の件で受刑者の開放型処遇に対して厳しい意見が出ることは当然だと思います。そもそも、開放型処遇を完全に止めて高い塀のなかに押し込めておくほうがいい。あるいは、開放型処遇から逃走した受刑者には厳罰を与えるべきであるといった話です。

 

しかし、大井作業場を経験した人の再犯率が極端に低い(4%台)という話があります。閉鎖処遇の刑務所内での受刑者は、周りもみんな同じ立場ですから、ある意味でストレスが少なくて済みます。開放型で、一般の人と作業をする場合は受刑者であるという立場を否応なく感じ続けるということになります。

 

今回の逃走のきっかけも、受刑者を示すヘルメットではなく一般作業者用のヘルメットを(ふざけて?)被っていたのを刑務官に叱責されたことだという報道もありました。塀の中に戻して欲しいという受刑者が多いということです。

しかし、社会に出ればやはり前科者というレッテルが貼られます。開放型処遇のなかで、鍛えられたことで再犯率が下がります。方向性としては、開放型殊遇を拡大していくことは公共の福祉に沿うと思います。

 

逃走のリスクはあるのですが、今回の件をあまり大きな問題にせずに、よい解決策を見つけていって欲しいです。人権の問題ですから、政治家(野党を含む)の皆さんからも、活発な意見が出ればいいなぁと思います。