財務省の決裁文書の書き換え問題ですが、国有地の処分は日本の重要な課題です。
日本の国土は、およそ37.8万㎢です。西ノ島の噴火などで、1年間で2.3㎢増えたというニュースがありました。
国土のうち、国有地は8.8万㎢(23.2%)です。なんと、日本の国土の1/4は国有地なのです。更に、地方自治体が所有する土地が3.2万㎢ありますから、合わせると国土の31.6%が公有地ということになります。
ちょっと、驚きますよね。
さて、面積では国有地が23.2%を占めますが、大半は山岳・山林です。日本の地価総額は約1150兆円ですが、国有地の台帳価格は18兆円程度で1.5%くらいです。
国有地のなかには、利用できるのに使われていない「未利用国有地」が、平成28年度末の台帳価格では4234億円あります。森友学園には、台帳価格7.4億円の国有地を1.34億円で売却したというわけです。この差額が値引きなのか、地下埋設廃棄物の処分費等に充当して適当なのかということが議論になりました。
国有地の売却というと大変なことのように思いますが、過去5年間に財務省が売却した国有地の総額は8613億円(1年間に平均1723億円)にもなります。財務省は、国有地をバンバン売り払っているわけです。財務省以外の省庁も、未利用国有地を所有していて、年平均150億円くらい売っています。合わせると、1年に1900億円です。
これは、バンバン売らないといけない理由があるのです。
実は、この5年間に新たに国有地になったものが7735億円(年平均1547億円)もあるのです。税金の物納などで、ほっておくと国有地はドンドン増えるのです。このため、国は一貫して未利用国有地処分の促進を図っています。公共・公用を原則として、とにかく処分を急いでいきます。
未利用国有地の多くは、森友学園のように航空機騒音や高速道路高架の影響、地下埋設廃棄物などの瑕疵があります。物納物件であれば建物が建っていたり、地下に構造物があったり、隣地との境界が不明確といった物件が大半です。財務局のウェブサイトを見るとわかります。
そのまま放置すると景観を損ねたり、危険だったり、不法侵入があったりと社会に不都合なことが起こりますから、払い下げて民間で活用してもらうのが公共の利益になります。
これらの問題物件を、財務省は基本的に現状有姿で売却しようとします。更地にして、造成して高く売るといったことはしません。まぁ、財務省ですから当然でしょうか。
したがって、取引条件は物件毎でそれぞれ異なります。買主と折り合いをつけるという作業は日常的におこなわれ、通常の不動産取引より、駆け引きの程度は大きいでしょう。
その駆け引きを記録したものは確かに公文書ですが、公開を考えて作成するものではないでしょう。テレビで元キャリア官僚さんが話したり、財務省は最強の官庁と言われる人がいますが、全てではありません。
財務省が国民の財産を安く売って損害を与えた、という論を唱える人がいますが、これは間違いです。国有地は国民共有の財産ですから、公共・公用に利用する国民に売却した場合には、国民に損害を与えるということにはなりません。今回の騒動で、不自然に国有地売却にブレーキがかかると、困ったことになります。