【日曜連載】中小企業診断士試験合格への道標⑨

連載第9回目です。今回は、2次試験について書いてみます。

 

ビジネス資格に兆戦
ビジネス資格に兆戦

2次試験は1次試験に合格しないと受けられません。まぁ、当たり前です。ただ、実は2次試験には筆記試験と口述試験があって、筆記試験は口述試験を受ける資格を与える試験となっています。口述試験に合格しないと2次試験の合格ではありません。

 

と、書きましたが、口述試験で落ちる人はほぼゼロです。よほど、とんでもない人(どんな人だろうか?)でなければ大丈夫です。ということで、重要なのは2次試験の筆記問題です。

 

一般には1次試験を受けた日の夜から2次試験の勉強を始める人が多いと思います。1次試験はマークシートなので自己採点すれば合否は結果を待たずにわかります。合格を確信してから勉強しても間に合うかも知れませんが、早めに準備をすることは有効です。

 

筆記問題は4問で各80分です。1次試験同様に各問40点以上で合計で6割(240点)以上で合格です。ところが、記述式の試験なのでどういう基準で採点されるのかが不明です。自分の答案がどう評価されたか、よくわかりません。まぁ合格したから、よかったんだろうと思うだけです。

 

4問の領域は「Ⅰ.組織・人事」「Ⅱ.販売・流通」「Ⅲ.生産・技術」「Ⅳ.財務・会計」に分かれます。最初のⅠ~Ⅲは、それぞれの人で得意分野があると思いますので、その分野は落とさないことです。Ⅳの財務・会計は勉強すれば点が取れる(勉強しないと取れない)科目ですから勉強しましょう。

 

2次試験の特徴は、与件の文章が長いことです。2000~3000文字くらいあります。しかも、文章がわかりにくい(わざとかなぁ?)のです。

これを読み解くコツは、1次試験と同じく用語(キーワード)です。文章に出てくる重要そうな用語に下線を引いてチェックしながら読みます。同時に、出てくる数字をチェックします。

用語(と数字)をおよそ把握できれば、問題を及第点まで解くことはできるはずです。ここでも、完全な正解を目指さず、及第点(60点)で構わないと割り切ります。

また、1次試験と違って2次試験では用語の正確な意味が説明できなくても、ぼんやりとでも分かっていれば構いません。

 

さて、昨年の試験問題を見てみましょう。Ⅰの冒頭部分です。

全文は中小企業診断協会のウェブサイトで見てください。 


冒頭部分だけ呼んでも、文章としては読みにくいとわかります。どちらかと言えば、データが羅列されていると捉えたほうがいいですね。

 

そこで、キーワードに下線を入れていきます。「資本金1000万円」「売上高8億円」「菓子製造業」「高級菓子」「社長・専務・正規社員18名・非正規社員70名」・・・・などです。

数字は、問題用紙の欄外に書き出しておくのもいいでしょう。

 

この文章に対して、5つの設問があるのですが、第1問です。


さて、2次試験の解答の書き方に正解があるかどうかはわかりません。以下は、私だったらどう書くかということです。あくまでも一例としてください。 

 

解答するポイントは、与件の文章にでてくる内容(センテンスやワード)を使うことです。あまり、突飛なことを書いても採点者も戸惑うでしょうし、受験生の優れた見識を聞きたいわけでもないでしょう。採点するだけでも大変です。

 

この問の場合だと、一度市場から消えた主力商品が再び人気になったことに関して、「もともと贔屓筋が復活を嘆願するような商品」「100品目の菓子をつくっていたのを3種類の主力商品に絞り込んだ」「商品名を冠した社名にした」「かつてと同じ品質や食感を出すために必要な機械を導入した」といったことが与件の文章にあります。先ずは、これらから一つ二つを組み合わせて、100字にまとめると40点はとれると思います。

 

但し、ここで考えないといけないのは、設問では”最大の要因”とあることです。つまり、これらの要因から最大のものは何かと訊ねているのです。

 

こうなると、上の要因のうちで”主力商品を絞り込んだ”だけが、「商品アイテムを主力商品だけに限定して」という表現に代えられて、与件の文章内に2度繰り返されていますから、どうもこれが最大の要因ではないかと当りがつきます。長いといっても2~3千文字の文章に類似の表現が2回でてくれば、出題者が気付いて欲しいと思っている内容だろうと忖度します。

 

ここで、解答として「商品アイテムを絞り込んだことが最大の要因である」ということを100字に膨らませて書くと60点に近づくと思います。

 

更に、60点以上の解答にするには、商品アイテムを絞り込むことが、どんなふうに効果的だったかを書きます。このとき、1次試験で勉強したことが役に立ちます。

 

私が解答を書くとしたら次のような文になります。

「最大の要因は、A社が商品アイテムを絞り込んだことである。社員も少なく、資金も不足していたA社は、主力商品にプロモーションや生産設備の導入などの経営資源を集中させることで、人気商品にすることに成功した。(100字)」

 

尚、字数は助詞や文末の書き方で調整できますから、あまり気にしなくていいです。例えば、”・・ことである。”は”・・こと。”で止めることもできます。”不足していたA社”を”不足したA社”にしても、意味は同じです。 

 

ここで、1次試験の勉強が役に立つというのは、経営資源が乏しい会社が取るべき戦略として「ランチェスター法則」というの学んでいたはずだからです。思い出しましたか?

これは予想ですが、問題をつくる側には何かの意図があるはずなので、この場合は従業員(しかも営業課長レベル)が承継して、人も資金も少ない会社の戦略を問うているのだから、ランチェスターかな?と想像したところです。

 

さて、戦いでは、局地戦(接近戦)の場合ですが、”武器の効率×兵の数”が大きいほうが勝利するというのがランチェスター法則です。

 

この法則を受けたランチェスター戦略には、弱者の戦略と強者の戦略があります。中小企業診断士が使うのは、弱者の戦略がほとんどです。弱者の取るべき戦略は3つです。

①戦いの場を限定する。(局地戦・接近戦・ゲリラ戦に持ち込むことです。)

②武器の効率を高める。(1対1の戦いに持ち込めば強力な武器で勝てます。)

③兵力を集中させる。(武器に強みが無ければ、兵力を集中して個別撃破します。)

 

A社は、商品アイテムを絞り込むことで戦いの場を狭くして、主力商品の品質や食感を高めて武器の効率を高め、会社の社名に商品を冠するとか、(恐らく)営業、生産、広告宣伝、サービスなどを集中させることで、独自性、優位性を確立していきました。

 

 

試験とは関係なく、中小企業が優位性を確立するには、経営資源の集中(重点配分)が大事です。これは、経営指導のときのポイントなんですが、耳を傾けてくれない経営者さんが結構多いのも実態です。