ブタとウシとクジラと・・

イスラム教の方はブタを、ヒンズー教の方はウシを、キリスト教の方はクジラを食べません。

 

熊野捕鯨の図
熊野捕鯨の図

最後のクジラはちょっとおまけです。(fakeかな?)

 

それぞれの宗教には、いろいろな忌避があります。イスラム教徒やユダヤ教徒がブタを、ヒンズー教徒がウシを食べないのはよく知られています。

 

何故、そうなったのか?と言えば、イスラム教とユダヤ教(それにキリスト教もですが)が生まれた中東の地は暑くて乾燥した地域で、豚の成育に適していません。つまり、豚肉を継続的に食べるの困難で、贅沢なことだったので、これを禁じたわけです。豚肉を食べないことに合理性があったということです。

逆にキリスト教徒はどうして豚肉を食べるのか?という逆の疑問になります。キリスト教も中東の地にあった時代は豚肉を忌避していたのですが、もともと豚肉を食べていた欧州へ信仰を広げる過程で、この教えを放棄したということのようです。

 

ヒンズー教徒がウシを食べなくなった理由は少し違います。インドには多くの牛が飼育されています。ただ、これらの牛はとても役に立つのです。農作業や荷物の運搬に使われ、糞は燃料や肥料になり、更に牛乳も採れます。食べるウシは若いうちですから、人々が牛肉の味を覚えて、牛が減ると困ります。牛肉を食べてはならないと決めるのは、合理的です。

 

キリスト教徒は世界に広がったので、食に関する忌避は少ないのですが、ローマ・カトリック教徒はウマを食べません。これは、ヒンズー教のウシと同じ背景でしょう。

まぁ、宗教や言い伝えというのは、合理的なものだということです。

 

最後に日本ですが、日本人がクジラを食べていた理由は、日本の多湿な気候にあります。ウシでもブタでも生育に適しておらず、腐敗も早く進むので、肉を食べるのは贅沢なことでした。そこで、仏教の力を借りて、獣の肉を食べることを忌避するような考えを広めたのでしょう。

そのなかで、クジラは獣とは考えていなかった(サカナの仲間と思っていた)ので動物性タンパク源として捕獲していったわけです。

 

今や信じられませんが、1960年までの日本人の動物性たんぱく質の摂取源は鯨肉が1位です。国内の畜産振興が進んだことや冷蔵冷凍技術が進歩したこともありますが、アメリカやオーストラリアから食肉を輸入できる経済力ができたことで、鯨を食べる必要が薄くなってきました。捕鯨で栄えた山口県といては、ちょっと寂しいですね。