吉川英治「我以外皆我師」

私たちが会社に入った頃、部長クラスの人の何人かが揃って座右の銘にしていました。

 

宮本武蔵
宮本武蔵

「われ以外みなわが師」というのは、宮本武蔵の言葉かと思っていましたら、吉川英治の造語なんだそうです。武蔵は「我に師匠なし」と書き残しているので、ちょっと見には正反対です。

 

似たような話では、空海(弘法大師)が弟子たちを連れて赴いた先で、「あなたは素晴らしいお弟子をお持ちですね」と言われたそうです。すると、空海は「どこに弟子がおりましょうか。ここにいるのは、みんな私の師です」と答えたそうです。

 

北大路魯山人は「坐辺師友」を標榜していました。自分のまわりにある全ての人や物が師となり友になるということです。ちょっと、面白いのは師友は人に限らないということで、山も川も鳥も木も、古い器や壺も師であり友であるということです。「青年よ師を無数に択べ」とも言っています。

 

何故、突然こんなことを書き出したかというと、羽生善治新竜王の記者会見です。羽生さんは今話題の藤井四段をはじめとした若手も、多くの将棋ソフトも全てを師友として、研鑽を積んだ結果、永世七冠の偉業達成に至ったものと思います。

 

記者会見から印象的な言葉を書き残しておきましょう。(但し、ちょっと編集しています)

「将棋そのものを本質的にわかっているかというと、まだまだ何もわかっていない」

「ここ最近は将棋そのものも内容が大きく変わってきているので、理解していくのが難しくなってきている。若くて研究熱心な人たちの棋譜とかを勉強しながら、いいところを取り入れていかなくてはいけない」

「将棋の世界は、基本的に伝統、長い歴史がある世界ですが、盤上で起こっているのはテクノロジーの世界。日進月歩でどんどん進んでいます。過去の実績で勝てたといっても、これから先に何か盤上の上で意味があるかと言われれば、あまり意味がなくて。常に最先端を探求していくという思いでいます。」