False memory(虚偽記憶)記憶は当てにならない

人の記憶は曖昧なもので当てになりません。このことを前提として判断することは大事です。

 

ショッピングモール
ショッピングモール

兄が弟に「お前が小さいときにショッピングモールで迷子になったときは、慌てたよ。お前、あのときのこと覚えているか?」と質問しました。弟は「いや~、よく覚えていないなぁ」と応えます。

 

数日して、兄弟は自宅の近くで子供のころから何度も来たことのあるショッピングモールに行きます。あらためて兄が「お前、ここで迷子になったよな~。怖くなかったか?」と問いかけます。すると、弟は「いや~、あのときは青い服を着た警備の人が声を掛けてくれたので、そんなに怖くはなかったよ・・」と応えます。どうやら、そのときのことを少し思い出したようです。

 

これは、認知心理学の授業でやっていた内容です。もちろん、弟はそのショッピングセンターはもちろん、生れてから一度も迷子になって保護されたことはありません。

 

アメリカのある大学の心理学教室の教授が、スペースシャトル「チャレンジャー」の爆発事故の翌日に、大学の在校生に「爆発のニュースをどのように知ったか。」を書いてもらいます。

2年半後に同じ学生に「チャレンジャー号の爆発事故をどのように知ったか」を問いかけたところ、完全に異なった記憶を持っていた学生が25%いたそうです。

 

事故後の経験のなかでもチャレンジャー号に関する話題もあったのでしょう。記憶が入れ替わったり、想像が紛れ込んだりしたようです。それから、さらに半年後に同じ質問をしたうえで、3年前に自分が書いた紙を見せても、それらの学生は実際に爆発事故を知った場面を思い出すことはできなかったのです。

 

学問としての認知心理学は発展してきています。若くて知的水準の高い大学生で、しかも僅かな期間しか経っていなくても、記憶は曖昧であり、新たに記憶が創造されることがわかってきました。本人は嘘をついているわけでも、誰かを騙そうとしているわけでもありません。

自分の記憶に基づいて正直に証言をしているだけです。

 

しかし、今でも多くの人は証言者の話を鵜呑みにしてしまいます。数々の虚偽記憶に基づく証言があり、いろいろな混乱を招いています。物的証拠あるいは発生直後の正確な記録にのみ基づいて、審査をして判断しなければならないと思います。