日本漢字連盟は例年は年末に発表している今年の漢字を、前倒しして「嘘」に決定したと発表しました。森友問題での偽証、トランプ大統領の嘘ニュース発言などを受けてのものです。
エイプリルフールですが、あながち的外れではないかも知れませんね。漢字としては「偽」の方がしっくりきますが、2017年の第一四半期のキーワードは確かに「嘘」でしょう。
「嘘」には5つあるそうです。
1.自分を守るためにつく嘘。・・少しくらい嘘つかないと壊れてしまいます。
2.自分を大きく見せるためにつく嘘。・・嘘から出る真もあります。
3.他人を守るためにつく嘘。・・苦しんでいる人には「大丈夫だよ」と励まします。
4.自分が利益を得るためにつく嘘。・・オレオレ詐欺なんかです。
5.相手を貶めるためにつく嘘。・・フェイクニュースはこれですね。
「嘘」にもついてよい嘘と、ついてはいけない嘘があります。
典型的なのは、病気の人に実際と異なる病名を伝えて、「大丈夫。簡単な手術ですぐに治る」と言うのはときと場合によってはよい嘘です。
病気で言えば「偽薬(嘘薬)」の効果も知られています。
私の高校の先輩は、大学入試で宿泊した長崎の旅館で運悪く体調を崩しました。
旅館の人が連れていってくれた病院で、お医者さんから「この注射は絶対に効いて、試験もうまくいくだろうが、1本8万円して保険も効かない。注射して構わないか、親に確認しよう。ここから電話しなさい。」と言われたそうです。
先輩は注射の効果と、親に電話して励まされたこともあって無事に合格しました。
40年近く前のことです。携帯電話もありませんし、当時の高校生は旅館から電話することは頭に浮かばないのです。電話を引き取ったお医者さんが、「8万円は嘘です。特別な注射ではないが、試験は受けられる。」と親御さんに伝えたのは言うまでもありません。
試験がうまくいったのは、嘘薬より母親の声だったかも知れません。
もちろん、詐欺やフェイクニュースなど反社会的な嘘はついてはいけません。
国会の論戦なんかは微妙です。誰かが嘘をついているのですが、誰なのか判断ができませんし、悪い嘘なのかもよくわかりません。
ところで、「嘘も方便」と言います。
「方便」というのは、仏教の言葉で人を悟りに向かわせるためにつく嘘のことです。「法華経」のなかにでてきます。この嘘は、釈尊や如来が衆生を導くためのものです。
参考 ☞ 天台宗 法話集 「方便」