韓国は”孝”の国

釜山の日本領事館前に建てられた「慰安婦像」を巡って、日韓関係はこじれています。

 

初めて韓国を訪問したのは30数年前のことです。当時は就職したばかりで、もちろん独身です。同期入社の友人と二人で気軽な海外旅行として韓国に出掛けました。

いわゆるフリーツアーで、福岡空港と釜山・金海空港の往復航空券+釜山のホテル宿泊+空港とホテルの送迎がついて、その他は自由というものです。

 

その旅行で、とても印象的な光景を見ました。慶州から釜山(海雲台で途中下車)に戻る列車のなかでの体験です。機関車が引っ張る客車は、両端にデッキがあって、座席は両側に対面4席で固定されています。当時は日本でも一般的な形式です。

 

たまたま、ほぼ満席で乗車率は110~120%くらいです。100人が座れるとすれば、10人強が立っている感じでしょうか?

もちろん我々はシャイな日本人の若者ですから、客車の端っこに立っていました。座っている人はみんな韓国の方で、若い人もお年寄りも男性も女性もいろいろです。男子大学生らしいグループは、結構はしゃいでいます。全体に、日本の列車内より僅かに賑やかって感じでした。

 

列車が駅に着くと、何人かが降りていき、何人かが乗ってきます。そのときに、とても自然に座っている若い人が立ち上がり、年配の人が代わりに席に着きます。

結果として、客車内で立っているのは、常に我々2人を含めて若い人だけです。その入れ替わりが実にスムーズで、まるで台本があって事前に決まっているかのようなのです。

 

とても感動的で美しい光景だったので、その後も韓国の人と会うとこの話をします。「昔のことだ」という人も多いのですが、韓国の方の根本は今も変わらないのだろうと思います。

韓国では、年齢が倍の人は全て親、10歳上なら兄、±5歳なら友、と考えると聞きました。慶州からの車内で観た光景は当にそういう印象でした。

 

韓国は儒教の国だと言われます。儒教は中国から朝鮮半島を経由して日本にも伝えられました。儒教の教えの本幹ではないかも知れませんが、”忠”と”孝”という二つの徳目があります。

”忠”は、君臣間の徳目で、”孝”は親子間の徳目です。日本の場合は、武士道で代表されるように、”忠”が”孝”に優先し、韓国では”孝”が優先されると言われます。

この差異は、韓国が中国と陸続きであり、日本が中国と海で隔てられいたという地政学的な圧力の大小で説明されます。

 

「忠ならんとすれば孝ならず、孝ならんとすれば忠ならず」と、”忠”と”孝”は板挟みの例として使われます。日本では、明治になって教育勅語で「忠孝一致」を盛んに説くようになりました。

日本と韓国は価値観を共有できる隣国どうしだと確信しています。この問題が収束して前向きな解決が成されて「日韓一致」となることを願っています。