イギリスのEU離脱 オバマもメルケルも何も言わない

英国の女性議員が殺害された事件が残留への流れを決めるかと思いましたが、そうでもないですね。

 

いよいよ、各メディアにイギリスのEU離脱の影響について、定量的な分析が出てくるようになりました。いや~?!、なかには恐ろしい予言も混じっていますから、不安が募ります。 

 

世界金融の中心のひとつであるロンドン・シティが混乱して、アメリカ・ウォール街に波及する影響を分析するなどは恐怖ですね。東京市場は、ひとたまりもない?かも知れません。

アベノミクスの果実どころではなさそうです。参議院選挙の党首討論がおこなわれていますが、この問題(ヨーロッパのパワーバランスの崩壊)についての議論は何もないのは不思議です。 

 

もともとヨーロッパはイギリスとフランスの二大国で引っ張っていたわけです。英仏二大国が欧州統合を牽引したのです。

これに東西冷戦下でロシア(ソ連)に対抗するために、アメリカが参加するNATO軍が結成されて英米仏の三か国の強力なタッグができて世界をリードしました。

 

 

ところが、フランスが先に弱体化し、イギリスが後に続きました。代わって東西統一も果たしたドイツが英仏に対して優位を築いていきました。

それでもEUの№2は今でもイギリスです。イギリスとフランスが協力すれば、何とかドイツに話ができます。ところが、イギリスがEU離脱すると、フランスが変わって№2になります。ドイツとの力の差はGDPでは3:2くらいですが、経済の実態はかなり悪いようです。外交力ではその差が歴然と開いています。さらに、イスラム系住民が多いフランスは、このところ難しい課題を国内に抱えています。本当なら、ここは、EU内部でイギリスに踏ん張ってもらいたいところです。

G7でもそうですが、メルケル首相・キャメロン首相・オランド大統領と3人が並ぶと、存在感に大きな差があります。

 

ちなみに、日本からの投資は圧倒的にイギリスが多いのです。<影響は大きいです。>

2015年の実績で、イギリスに152億ドル投資して残高892億ドル。

ドイツは同じく27億ドルと208億ドル。フランスは6億ドルと132億ドルです。

 

さて、EUを離脱したイギリスの頼みは、アメリカと中国になりそうです。

 

英米の関係は歴史的にも強固で、「世界で最も強い二国間関係」と英国側は思っているようです。しかし、米国側はどうでしょうか?このところ、オバマ大統領は沈黙しています。トランプ氏はEU離脱に賛成していますが、イギリスを特別な友人とみてくれるか疑問です。

(トランプ氏の母親はスコットランド出身です。イギリスがEU離脱すると、スコットランドの独立問題も再燃しそうです。・・EU離脱したいのは本当はイングランドなんですよね。)

 

中国との関係には大きな期待を掛けているようです。世界の反対を押し切ってアジアインフラ投資銀行に一番に参加したり、あからさまに媚びているように見えます。しかし、人権侵害や覇権主義の課題を抱える独裁国家である中国に、誇り高きイギリスが頼ってよいのかは疑問もあります。

 

まぁ、イギリスのEU離脱が成功するか失敗に終わるか、それともどちらでもないのかは、歴史の実験で誰にもわかりません。

ただ、いずれにせよ、大きな影響が地球を一周することは間違いなさそうです。ここまで国論を二分した議論になった以上、国民投票でEU残留が決まっても影響は避けられないでしょう。

 

もうすでに、EUに対する信頼や安心感が薄れています。つぎの世界経済危機の震源がヨーロッパにある確率は高そうです。