フィールズ賞は1990年の森重文(京都大)以来受賞していない

今年のノーベル賞に二人の日本人(物理学賞と医学生理学賞)が選ばれましたが・・・

 

自然科学の分野で日本の研究者が評価されていることは、大きな喜びであり、誇りです。

 

ただ、理系科目と言えば理科と数学です。この一方の数学の分野で、最近の日本は少々分が悪いと言えます。ノーベル賞の自然科学分野には物理学賞と医学生理学賞と化学賞がありますが、数学は受賞対象ではありません。

 

数学の分野ではノーベル賞に代わって「フィールズ賞」が最も権威のある賞と言われます。この賞は、4年に一度開催される国際数学者会議で、原則として40歳以下の若手数学者に授与されます。

 

 

これまでの日本人の受賞者は、小平邦彦(東大:1954)・広中平祐(京大:1970)・森重文(京大:1990)の3人です。日本の受賞者数(3人)は国別順位では、アメリカ(13人)・フランス(12人)・ロシア(9人)・イギリス(7人)に次いで第5位ですから、立派な成績です。

 

しかし、1990年以降に開催された5回の会議では日本人の受賞はありませんでした。この間の受賞者は、フランス7人・ロシア6人・イギリス3人・アメリカ2人・その他8か国が各1人です。つまり上位4か国が受賞者を増やしているので、日本の5位は第二集団のトップという印象です。

 

日本での自然科学研究は数学には少々冷淡なのかも知れません。

今年のノーベル物理学賞受賞につながったスーパーカミオカンデの建設費用は104億円だったそうで、計画中のハイパーカミオカンデの予想建設費用は800億円と言われます。

 

それに対して、日本国の数学関連の科学研究費の総額は20億円程度だそうです。

また、日本には数学関係の専門研究機関は、京大数理解析研究所の1箇所があるだけで、国立の研究機関はありません。上位4か国には、アメリカは5か所、他の国にも複数の国立研究機関があります。

 

文部科学省が日本の有力な400の研究機関にアンケートをとった結果。

Q あなたの研究チームに数学をバックグラウンドに持つ人はいますか? ⇒ はい 26%

Q あなたのライバルである欧米の研究チームにはいますか?      ⇒ はい 62%

Q あなたの研究チームい数学のバックグラウンドを持つ人は必要ですか ⇒ はい 65%

 

ノーベル賞で基礎研究の重要性が再認識されて科研費予算も増えると思います。ただ、堅牢な建築物には、基礎の下に支持層まで到達している地下に見えない杭が必要です。

数学の研究はお金があまり要らないので、政治的にも華々しくないのですが、国家100年の計としては、一層力を入れることが望まれます。