「うんこ」鑑定のほうが精度が高い??

人の腸には、1000種類・100兆個・重さ1kgの細菌が棲みついていて、その組成は個人によってそれぞれ決まっているそうです。

 

分析会社に勤める人から、「DNA鑑定は親子関係を鑑定するのには高い信頼性があるけれど、刑事事件で犯罪者を特定するときなど、個人を識別するのには精度や信頼性が完璧とは言えない。それよりも、人の腸内細菌叢の組成のほうが個人差がはっきりしているので、個人の識別には適しているかも知れない。」という話を聞きました。

 

凄くびっくりしたのですが、今は腸内細菌というのがちょっとしたブームになっているようです。

先ず、細菌(微生物)はどこにでもあります。宇宙空間はともかく、上空10000mでも海底10000mでも、極地の低温でも火山の高温でも、空気があってもなくても、何かしらの微生物は棲んでいます。地球は微生物の惑星です。

 

 

そこで、腸内細菌とは・・

お母さんのおなかのなか、胎児は完全に無菌状態です。腸内細菌はありません。

出産のときに産道を通るときに、赤ちゃんはその壁を舐めまわすことになるので、産道に棲んでいる細菌を経口で体内に入れます。これが赤ちゃんが最初に体内に取り込む細菌だそうです。仮に帝王切開の場合には、空気中の細菌や助産師さんの身体についた細菌を取り込みます。

その後、赤ちゃんは、母乳やミルクを通して、空気や人を通して、細菌を身体の中にばんばん取り込みます。こうして、産後10日ほどで独自の腸内細菌叢組成が形成されるのだそうです。この菌叢組成は離乳食を食べるころには安定して、それ以降はほとんど変わらないのだそうです。

 

腸の内部は酸素がない(嫌気性)など厳しい環境ですから、そこで生息できる細菌だけが棲みつきます。乳酸菌や納豆菌の仲間、大腸菌の仲間、ビフィズス菌の仲間などがそうです。(乳酸菌やビフィズス菌が上等な微生物というわけではない。)

腸内細菌の主な働きは、人が代謝できない食物中の多糖類を分解してビタミンや脂肪酸に変えて供給してくれることです。逆に細菌としては、自分が取りたい食物がじっとしていても来るので便利です。人と腸内細菌は持ちつ持たれつの共生関係にあります。

 

昔は、この腸内細菌をひとつづつ分離培養して解析しようとしていたのですが、分離することは難しい(あるいは出来ない)ことでした。最近になって、全部の腸内細菌をまとめて遺伝子解析する方法が開発されたのだそうです。

この測定結果から、人は個体ごとに独特な腸内細菌の組成を持っていることが判ってきたそうです。人の遺伝情報とは関係が無いので、親と子でも、兄弟でも、細菌組成は同じではありません。同じ時期に生まれて、同じ空気を吸っていた双子では、似かよっているそうですが、全く同じではないそうです。

 

ところで、腸内細菌は食事とか、乳児の時代を終えてからの食生活で変わらないのでしょうか?

例えば、納豆ばかり食べたとかヨーグルトばかり食べると腸内細菌の組成が変わるような気がします。

しかし、乳児期を終えて食物を胃で消化できるようになってからは、口から摂取した納豆菌や乳酸菌は胃酸で死んでしまうのだそうです。また、カプセルなどで無理やり腸まで届けても、長生きできずに組成を変えるまでにはならないということで、個人を識別できる程度には腸内細菌の組成の差は変化せずにありそうだというお話でした。

とは言っても、まだまだ人の身体のなかは、よく分からないことだらけのようです。これからも、いろいろ研究が続けられていくようです。