都会への投資と地方への投資はどちらが効果的か

東京五輪に向けて国立競技場の建設費用が3000億円を超えるという話題が出ています。

 

山口県に住んでいると地方創生という旗印の下で地方への投資を推進してもらいたいという気持ちです。しかし、この前に東京に住んでいたときは苦労して稼いでいる都会にもっと投資して欲しいという気持ちもありました。

 

地方と都会のインフラの整備率が同じ(50%)として、10%向上させるのに地方は10億円、都会は20億円の費用がかかるとします。その費用を掛けて整備したインフラの恩恵を受けるのは地方では10万人、都会では40万人だとします。そして、1人が1万円分の便益を得るとします。

 

投資判断は、便益の額÷費用(投資効率)を最大にすることですから、地方への投資は10億円の費用で10億円の便益ですから投資効率100%。都会への投資は20億円の費用で40億円の便益ですから投資効率200%。都会に投資したほうが合理的です。

 

ところが、地方のインフラ整備率が50%でも都会の整備率が既に80%だったらどうでしょうか? 投資効率は同じですから都会に投資するのが合理的ですが、地方のインフラ整備率を都会並みに引き上げることをみんなが合意しているなら、地方に30億円を投資する(便益は15億円増える)ことになります。

これで、地方も都会も同じ80%の整備率です。これも合理的です。

 

しかし、その30億円を都会への投資にして60億円の便益を獲得して(この時点で都会の整備率95%)、儲けた30億円を地方に再投資すればインフラ整備率は80%になります。計算の上では、こちらのほうがもっと合理的です。

 

地方の人口減少が進み、都会への人口集中が続いているならば、都会に先に投資することの合理性は高まる一方です。東京五輪の開催や大阪圏の再開発の動きは、合理的に見えます。

 

しかし、上の計算で欠けている視点があります。それが現在価値という考え方です。つまり、現在持っている1億円と将来(例えば5年後)手にする1億円では価値が違う(5年後の1億円の現在価値は1億円以下)ということです。

この価値が減っていく割合を割引率といいます。投資計算では割引率を10%とかに置くことがあります。10%の割引率で計算すれば、5年後の1億円の現在価値は6200万円になります。

 

おそらく、住民感覚はもっと過敏で、とにかく早く実行して欲しいと皆が期待します。このあたりのバランスをとり、折り合いをつけていって、多数の納得を得ることが重要なのですが、とても難しいことです。

 

そうは言っても、なんだかんだと議論ばかりが長引いて、どちらにも決まらないことのほうがもっと大きな損失になります。橋下さんが、「政治で一番重要なのは独裁」と言っているのも、一分の利はありました。まぁ、結論としては、民主主義はたいへん労力がかかりますが、やりきるしかないということでしょうか。