人類とチンパンジーを分かつものは何か。

日経新聞の「私の履歴書」(日立製作所の川村隆相談役)に、次の記述があって少し驚きました。

 

昨日(5月31日)の最終回のなかで、川村さんは「学問の先端調べ」が趣味だと書かれています。その一例として以下のようにあります。(以下、引用します)

 

『チンパンジーは群れの間ですさまじい闘争を繰り広げ、同類殺しを辞さないことが最近の研究で分かってきた。しかし、チンパンジーと共通の祖先を持つ人間は、普段はそこまでの暴力衝動に駆られることはなく、協力して文明を発達させてきた。人類とチンパンジーを分かつものは何か・・』

 

何故、驚いたかと言うと、この逆だと思っている人(あるいは広言する人)が多いのです。つまり、『人間以外の動物は喧嘩をしても殺し合いなんかしない。人間だけが同胞と殺し合いをする。』ということです。

 

人間については、戦争や紛争における殺人をイメージしたもので、動物については家畜を含めて身の回りにいる動物を観たイメージだと思います。しっかり確認はしていないのですが、何となく多くの人に真実と信じられているようです。

 

しかし、実際は川村さんの記事にあるように、少数の例外を除いて、野生の動物は同じコミュニティー(群れや家族)以外の他のコミュニティーに属する同類を殺します。コミュニティー間のパワーバランスが大きく崩れた場合には、乳幼児を含めて全滅をさせてしまうことがあります。

 

これはある意味で自然の摂理です。殺戮によって弱いコミュニティーを淘汰して、限られた食料などの資源を確保することで、種を保存しているのです。

同類殺しをしない少数の例外とは、個体数が十分に減ってしまった動物で、霊長類ではボノボのような例です。

 

孟子は「性は猶ほ湍水のごときなり」(人間の本性は善であって、それは水が下に向かって流れるように間違いがない。)と言っています。西洋では、J.J.ルソーが、「人の本性は善であり、成長するとは、善なるものの喪失の過程だ」と言っています。

 

人間はほかの動物と違って、淘汰のための闘争や殺戮をしません。

人間は、チンパンジーと明確に分けられた存在です。世界の人々が協力して善を積んで文明を発達させなければなりません。

但し、世界のパワーバランスが偏ると争いを起こそうという気持ちが高まることも歴史の事実です。均衡を保ちながら、発展していくことが重要だと思います。