ピカソ「アルジェの女たち」215億円・・値段はどうやってきまる?

「モノの値段はコストや品質に関係なく買い手の気持ちのみで決まる」のです。ピカソの絵の値段も、合理的な評価は不可能ですね。

 

【NHKニュース 2015/5/11より】

20世紀を代表するスペインの画家、パブロ・ピカソの作品「アルジェの女たち」が、アメリカ・ニューヨークで競売にかけられ、美術品としては史上最高額とされる1億7900万ドル余り、日本円でおよそ215億円で落札されました。

クリスティーズによりますと、競売で落札された美術品としては、史上最高額だということです。

 

 

一般に、値段が市場で決まるメカニズムは、「買いたい人が多くて売りたい人が少ないものほど値段は高くなる。」というのが、合理的でわかりやすいです。

 

ところが、ピカソの画はこう言っては何ですが、どこにでもあります。山口県は不詳ですが、東京まで行かなくても、ひろしま美術館でも4~5点は観れますし、倉敷の大原美術館にもあります。常設でなくても、「ピカソ展」というのはしょっちゅう開催されているような気がします。

 

それもそのはず、ピカソは、世界で最も多作な画家としてギネスブックに載っています。油彩と素描で13,500点、版画が100,000点、挿絵が34,000点だそうです。

92歳の長寿を全うしましたし、9歳のときの画がすでに天才と言われて残っているにしても、創作日数は30,000日くらいです。ピカソは、とにかく、ず~と画を描き続けたというわけですね。

 

つまり、ピカソの画はかなりの量がありますから、市場の合理性から言えばそんなに高い値段にならないはずです。寡作だったフェルメールや31歳で亡くなったスーラなんかの絵が高いほうが当たり前のような気がします。しかも、「アルジェの女たち」という絵をニュースで見ても、結構大きい絵なのね?と思うくらいで、どれほど素晴らしいのかピンときません。

それでも、ピカソの絵が競売に掛けられると、こんな値段になるのです。

 

さて、ピカソは1881年にスペインのマラガで生まれて、1973年に南仏ニースで亡くなっているのですが、早熟の天才でもあって、17歳でスペインの展覧会で入賞していて、20歳前後(1900年)には既に有名画家としてパリで個展を開いています。

 

ちょうど、その頃のパリにはロンドンに留学中だった日本の無名の英語教師・夏目漱石(そのとき33歳)がうろうろしていて、エッフェル塔に昇ったりしています。

19世紀の最後の年に、ピカソと漱石がシャンゼリゼですれ違っていたかも知れませんね。