できることなら、肥ったソクラテスになりたい

昨日の続きです。「スマホやめますか、それとも・・・」

 

東京大学教養学部の卒業式での石井学部長(この日で定年退官でした)の祝辞が話題です。

 

先に種明かしをしておきますと、「教養」とはスマホ情報を鵜呑みにするのではなく、真偽を疑って、一次情報に立ち返り、自分の頭と足で検証することでしか身に着かないと言っています。

「スマホやめますか、教養を捨てますか」ですね。

 

その例として、1964年(東京オリンピックの年)に、当時の大河内東大総長が卒業式で語ったとして有名な「肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ」という言葉を取り上げています。

 

誰でも知っている警句ですが、3つの間違いがあるそうです。

 

1.そもそも大河内学長は卒業式でこの言葉を言っていない。・・・ビックリ!!

(草稿にはあったのですが、言わなかったそうです。)

 

2.この言葉は、J.S.ミルからの借用で、大河内学長のオリジナルではない。

⇒ J.S.ミル『功利主義論』のなかに、以下の記述がある。

「満足した豚であるより、不満足な人間であるほうがよい。

 満足した馬鹿であるより、不満足なソクラテスであるほうがよい。」

 

3.大河内学長の草稿では、学生に「痩せたソクラテスになれ」と強要していない。

⇒ 草稿のその部分は、以下になっている。

「・・・、昔J.S.ミルは『肥った豚になるよりは痩せたソクラテスになりたい』と言ったことがあります。我々は、なろうことなら肥ったソクラテスになりたいと思うのですが・・・」

 

確かに、全然印象がちがいますよね。

でも、「肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ」という言葉が、昭和40年代に若者だった団塊世代の人たちに与えた影響は計り知れません。何かの誤解が、日本を、世の中を、変えたわけです。

 

以上ですが、こんなブログの内容を賢明な方は少しも信頼してはいけません。