馬の恩返し ・・ 宇部の民話

厚狭の寝太郎に続いて、宇部の民話「馬の恩返し」です。

 

宇部の藤曲(ふじまがり)に、野良でカラス石を掘る男がいた。(カラス石とは石炭のことで、当時の宇部では、地面浅いところで採れたのです。)この男は、少し足らないので近くの子ともにバカにされていたが、一頭の馬をたいそう可愛がっていた。

掘ったカラス石を自分が背負って、馬には担がせないほどで、馬のほうも何の仕事もしないで、いつも男の後をトボトボと付いていくのだった。

 

ある日、何故かカラス石がたんまり採れた日があった。翌日、男はカラス石を下関に売りにいくことにした。

まとまった金を懐にして、上機嫌で藤曲に帰っていたが、有帆川を越えたあたりで日が暮れてしまい、盗賊に出会ってしまった。

男は自分の身体でなく馬を庇ったので、それまで仕事もしていなかった馬が、突然盗賊に襲い掛かって男を守ったそうだ。

男は翌日からもカラス石を掘っては、馬を大事にしたというお話です。


 

古今東西、動物の恩返しというお話は多いです。鶴も亀も、犬も猫も、狸も狐も恩返しします。最近では、忠犬ハチ公の新しい銅像が話題になりました。

 

動物にも感謝の心や恩義というものがあるのだろうと思います。そして、その心を動かすきっかけは何なんだろうかと、興味はあります。しかし、最新の医学で人間の心でさえ、ようやく解りかけたところです。動物の心はまだまだ謎でしょうから、あまり細かく調べないままのほうがよいですね。

 

ところで、鶴の恩返しでも亀の恩返し(浦島太郎)でも、人間はやってはいけないと言われて、やらないと約束したことをしてしまいます。鶴の機織りを覗いたり、玉手箱を開けたり・・。

 

やるなと言われたり、見るなと言われると、やってみたくなる。逃げると負いたくなり、隠されると暴きたくなる。という人間の心のほうはもっと調べたほうがよいかも知れません。いろいろな危険が隠されていそうです。淡々と生きましょう。