景気回復は「行き過ぎた円高の是正」によるのか?

日本銀行のホームページからは多くの統計データが簡単に入手できます。

 

円ドル為替レートと実質実効為替レート(日銀HP2014.11.29)
円ドル為替レートと実質実効為替レート(日銀HP2014.11.29)

 右のグラフで、赤は「円とドルの為替レート」です。上に行くと円高で、下に行くほど円安になります。

なるほど90年代後半から2012年に向けて15年間は、対ドルでの円高が進んでいたことがわかります。そして、安倍政権発足後に急激に円安に動きました。

 

しかし世界は日本とアメリカだけではありません。そこで、世界各国の物価水準を調整(実質)して、世界で流通している円とドル以外のユーロや人民元なども総合(実効)した「実質実効為替レート」を日本銀行が計算して公表しています。

 

青が2010年を100とした実質実効為替レートです。赤と同じく、上に行くと円高で、下に行くと円安です。

 

予断を持たないでグラフを眺めてみます。赤と青の線は2002年まではほぼ重なっていますが、それ以降は上下に分かれています。つまり、円はドルに対しては高くなっていますが、総合的には逆に円安になっていることがわかります。

 

2008年のリーマンショックを機会に為替レートは大きく修正が入りました。その後も、対ドルレートは円高に進んでいますが、実質実効レートは安定していました。そして、現在の水準は円高の是正と言うよりは、記録的な「円安」水準と言えます。

 

このあたりの解説はいろいろな本に載っていますが、安倍首相の言う「2年前の行き過ぎた円高を是正したので景気が戻った」というだけではありません。